「異次元の少子化対策」を疑問視する声が広がった
18~29歳の未婚男女400人のうち「将来、子どもがほしくない」と回答した割合は55.2%ーー。3月8日の「国際女性デー」を前にまとめた「妊活白書2023」が話題を呼んでいる。 調査は2023年12月に4日間、インターネットで実施。男女別では、男性が59.0%、女性は51.1%だった。 初回の2020年度調査で「子どもがほしくない」と回答した男女の割合は44.0%。ここ3年で11ポイント超上昇したことになる。 ただ、「欲しくない」と答えた人のうち、22.3%が「将来子どもを持つ可能性は残しておきたい」と回答。女性は25.5%で、そのうちの2割は卵子凍結に興味があると回答した。 若年の未婚男女で、「子どもがほしくない」が半数超に上ったことに、SNSでは、岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」を疑問視する声が広がった。 年間3兆6000億円規模の財源を必要とする一方、「児童手当の拡充」など、子どもが生まれたあとの「子育て支援策」がおもな対策だからだ。 《岸田首相、異次元の少子化対策は何のためにやってんのさ? 状況は悪化してますよ》 《欲しくない人の理由はそれぞれだと思うけど、今の少子化対策が愚策ばかりなので見直しが必要!》 《異次元の少子化対策って言っているけどなんにも対策になってない やる事なす事がズレてるんだよな》 2月29日の衆院予算委員会では、2024年度予算案について専門家から意見を聞く中央公聴会が開かれた。 学習院大経済学部の鈴木亘教授は、「異次元の少子化対策」について、「少なくとも出生率が上がる効果は学術的に見てほぼない」と断言。「これに3.6兆円もかけるのか」とし、こう疑問を呈した。 「我が国の少子化の原因は、結婚したカップルが子どもを生まなくなったというよりは、結婚しなくなった、未婚率が上がったことに最大の原因がある。 今回の異次元の少子化対策は、そこにほとんどなにも手をついてないので、効果はあまりないというのが当然の帰結。金銭給付の拡大が今回の目玉ではあるが、経済学の実証研究を見ても、金銭給付で子どもが生まれるという結果はほとんどない」 さらに、2026年4月から、少子化対策の財源として公的医療保険に上乗せする「支援金制度」が始まることに、鈴木教授は、「子育て世代を含む現役世代が92%ぐらいの負担をする。フェアな制度ではない」と批判。 賃金上昇を加味するので、支援金を徴収しても、国民負担率は上がらないとする政府の説明は「詭弁だ。不誠実極まりない」と断じた。 だが、3月4日の参院予算委員会で、立憲民主党の石橋通宏氏から「未婚率の増加の原因」を問われた加藤鮎子こども政策担当相は、しどろもどろの答弁を続けるだけ。 このまま、現役世代の負担が増す「支援金制度」を進めれば、若年男女の「子どもが欲しくない」層がさらに増えることになりかねない。